IE-IEレター* Letter 3. ~チュウ先生に訊く~聞き手: ハン・ジェホさん(韓国出身)
~チュウ先生に訊く~ 聞き手: ハン・ジェホさん(韓国出身、J専攻M1<取材当時>)
短期留学生達の授業を英語で担当する国際教育センター、チュウ先生をインタビュー。
話し手:チュウ・チャオキョン先生 聞き手:ハン・ジェホさん
Interviewee:,CHOO Cheow Keong , Interviewer: Han Jaeho
(左)チュウ先生:プラハのCharles Bridgeで於2014年EAIE欧州国際教育交流協議会年次大会
(右)ハン・ジェホさん:大阪の道頓堀でJUSSTプログラムで短期留学中のころ
電通大JUSST(ジャスト) プログラム担当のチュウ先生に伺いました。※1 なお、聞き手のハンさんは、以前JUSST留学生としてチュウ先生の指導を受けたことがあります。
国際教育センターの任務の一つに短期留学生の受け入れがあります。JUSST(ジャスト) ※2あるいは短プロ※3として知られるこのプログラムには、東南アジアや欧米の協定校から毎年30名程※4の留学生が参加します。留学期間は基本的に最長2学期ですが、日本語や日本文化に関する科目や情報理工系の国際科目を受講しながら、配属された研究室で研究の第一歩を学ぶという野心的なプログラムです。研究成果は各学期末の min-Conference という発表会で学内に生中継されます。
※1 この記事は2021年5月28日のZoomインタビューに基づいて編集されたものです。
※2 Japanese University Studies in Science & Technologyの略
※3 短期交換留学プログラムの略
※4 コロナ以前の平均的な年間プログラム参加者数です
(以下 C=チュウ先生、H=ハン・ジェホさん)
[自己紹介]
[video:自己紹介]
C: チュウです。出身は東南アジアに位置するマレーシアです。
H: 私は、韓国出身のハン・ジェホです。情報学専攻山田(哲)研※5所属のマスター1年です。
※5 山田(哲)研の日本人学生は、短プロ生として来日早々でまだ日本語が分からなかったハンさんに配慮して、ゼミを英語でも実施し、それを通して自らの英語力も向上させた。
H: 先生の名前について面白い思い出があります。短プロで留学中だったころのことです。短プロ生はみんなチュウ先生のことを韓国人だと思いました。
C: 私のチュウは「朱(しゅ)」と書き、中国人には少ない苗字です。韓国ドラマの「朱蒙」の朱(チュ)と同じで※6、それで間違えられたかも知れませんね。
※6 朱蒙(チュモン)は高句麗建国の始祖である東明聖王の別名。2006年に韓国で放映された“朱蒙”という時代劇が日本でも爆発的な人気になった。
C: ところで、ハン君は今何をしていますか?
H: コロナで、まだ日本に入国できていません。研究室では私のためにオンラインの勉強会をしてくれます。講義に関しては、遠隔授業はやはり大変なので対面に期待しています。
[留学と就職と]
[video: 留学と就職と]
H: 私の指導教員の山田先生から「チュウ先生は学部から電通大~」と聞きました。先生は、いつ日本へ来ましたか?なぜ日本留学を選んだのですか?
C: 高校卒業後の1989年に来日しました。平成1年なので覚えやすいでしょう。
H: 私は平成6年生まれなので、まだ生まれていませんでしたね。
C: そうですね。来日後1年半、日本語学校で日本語を学び、1991年に入学しました。それから9年間学生でした。1980年代、日本経済は世界一でした。その当時、日本留学がブームだったので、さらに日本語を勉強しようと思いまして友人と一緒に日本留学に来ました。
H: なぜ、電通大を選んだのですか?
C: 選んだ理由は、まずは学費でした。国立は40万円で私立は100万円という時代でした。東京にある大学で都心に近い国立大という条件から電通大になりました。
H: 学部と修士の後に就職することは考えましたか?
C: 修士から奨学金を貰っていました。ドクターまでは受給を継続できました。一度就職すると再度勉学する機会はないと考えました。ハン君は?
H: 去年が悩みの時期でしたね。何が正しい選択か分かりませんでしたが、可能性を広げるために進学を選び、今は修士の勉学に専念しています。
C: 悩み事は?
H: みんなと同じでしょうね。どんな企業を選ぶかを決めるのは難しく、準備が必要です。インターンシップは役に立つと思います。
C: 情報収集が大切だね。ハン君は日本に就職したい?
H: 日韓どちらでもよいです。
C: 日本は韓国に近いからね。
H: でも、自分の日本語が充分か分からないです。
C: 今、私と外国人同士で話して通じているのだから、大丈夫。肝心なのは粘り強く勉強を続けること。日本で就職して韓国の現地法人へ移る可能性もある。言葉のレベルは働く場所で決まるから、日韓どちらでも働けるということはオプションが広がるということですね。それだけに決めかねるということはある。
[日本語の勉強について]
[video: 日本語の勉強について]
H: 日本語について、先生はどうでしたか?漢字※7は難しかったですか?
※7 韓国は日本と同じように漢字語圏だが、1970年から始まった漢字廃止政策によりハングル主体のシステムになった。
C: 漢字は書かないと覚えない。助かったのはパソコンのワープロですね。ローマ字で打ち込むとすぐに日本語の漢字※8になった。言葉の修得にはその言葉をよく使うことが大切です。しゃべるのも重要です。
※8 日本語の場合、漢字の伝来時期と経路が複数あるため音読みが一義的でないうえに訓読みもあり、漢字語は極めて難解。韓国語などでは漢字語の発音は一義的。
H: パソコンがなかったら大変だったでしょう!?
C: 今はインターネットがあるおかげで、いろいろな情報も得られて、言葉の習熟にも昔より便利ですね。
[短プロを通じて]
[video: 短プロを通じて]
H: 学生指導のやりがいは?
C: 今は主に短プロのお世話をしています。研究の仕方、発表の仕方、論文の書き方、投稿の仕方など。短プロ生は主に学部なので、研究したことがないですから、挑戦してもらいます。全部やって達成感を感じて欲しいと思ってやっています。そういえば、ハン君は短プロでやった研究を学会※9で発表しましたよね?
※9 JUSSTプログラムにおいて学会での成果発表(論文投稿含む)を達成した学生は約30%である。
H: はい、先生からいろいろ教えてもらいました。短プロでやったのが初めての研究。最初はたった1年で研究を完成できるか心配でした。でも、短プロで研究をするというのは電通大の強みだと思う。
C: 授業が主体だと思っていると、研究するというので留学生はビックリですよね。でも、「こうして研究するのだよ」と教えると大抵できるようになる。ちゃんとできると電通大に戻って来て、大学院に進学してくれる※10。大変嬉しいです。
※10 JUSSTプログラムにおいて修了学生のうち、日本の大学院に正規学生として入学した学生は約20%である。さらに現在、本プログラム修了生3名が本学の教員になっている。
[挑戦]
[video: 挑戦]
H: 先生は留学の先輩です。今の留学生に伝えたいことは?
C: 勉強、スポーツ、料理、部活など何にでも一生懸命にチャレンジしてみて欲しいです。将来きっと役に立ちます。私の場合、1991年に電通大に入学した時は、ちょうどインターネットの利用が始まったころです。面白いと思ったけど、まだ浸透していなかった。私はその時から使い始めていて、タイからの留学生(先輩)と一緒に留学生センター(国際教育センターの前身の一つ)内に「留学生専用のネットワーク」を構築しました。留学生用のメール、web ページ、メーリングリストなどを運営し、メールアドレスを学生に与えることは、当時は斬新なことでした。その頃、情報ネットワークの運営管理について学んだことは今の仕事にも役に立っています。
H: そうですね。
C: 新しいものに挑戦しましょう。たとえその時は役に立たなくても。
[研究紹介]
[video: 研究紹介]
H: 先生の研究分野は?
C: 学部では電子工学科という学科で、それからずっと半導体のシリコンについて研究し、やがてシリコン微粒子について研究していました。
H: Si-Cの素材のことですか?
C: Si-CのSi(シリコン)の方です。これで何をしたいかと言うと、Si半導体では発光確率が低く、発光素材に向かない。しかし、このSiのサイズをナノサイズに小さくすると発光するようになることが知られています。
H: 発光にGaAs(ガリウムヒ素)を使うと聞きました。
C: そうです。GaAsの方は、発光しやすいが、用いるGaの材料が希少なため価格が高いです。Siは安上がりです。大学院とその後も、Si(シリコン)とC(炭素)半導体材料及びその応用について研究をしていました。
*** 研究の話には熱がこもる****
H: 有難うございました。
終り
作成日:2021年12月 7日 / 更新日:2023年3月31日