【報告】ハルビン工程大学(中国)から大学生訪問団が来学
日本の先端科学技術研究とそれを支える基盤技術と環境
科学技術振興機構(JST)さくらサイエンスプランの支援を受け、2015年11月17日(日)~23日(土)の7日間、ハルビン工程大学(中国)から大学生8名・教員3名(計11名)を招聘した。 本学および日本の最先端研究の一端を紹介するとともに、日本人学生との交流を通じて、日本に対する理解を深めて将来の日本留学に繋げること目的とした。本研修プログラムは去年に引き続き2回目で、今回は本学の「学園祭とオープンキャンパス」の期間に実施することにして、日本人学生との交流会や大学の課外活動の紹介・見学体験も組み込んだ。
18日(水)は、午前に開会の挨拶と自己紹介から始まり、担当教員によるプログラムの全体説明と大学紹介を行った。午後は、本学のUECコミュニケーションミュージアムを訪問し、無線通信に関する歴史的な展示物を見学した。 世界でもここでしか見られない数多くの真空管、音響機器と無線通信機器(世界で唯一現存するHallicfrafters DD-1 Skyrider受信機など)を見ながら、本学の芳野名誉教授とミュージアムの職員による説明を聞きその歴史を学んだ。参加学生は、実際にまだ動く展示機器(例:ノーベル賞の小柴昌俊先生が実際に使用したリレー式計算機など)に触れ感激していた。 初日の最後は、本学に短期交換留学中の同大学の学生による本学での研究概要、留学の魅力と日本での生活についての発表を聞き、意見交流を行った。参加学生も非常に熱心に日本留学についての質問があり、日本留学に関して一層興味・関心を持ってもらえたようである。
19日(木)は、午前に東京都庁舎に向かい、東京都環境局の多和田氏による「持続的な発展と環境保全が両立している東京」の特別講義を受けた。世界一の環境先進都市東京都の幅広い環境対策や取り組みについて、参加学生は熱心に耳を傾けていた。 学生は、東京もかつて高度経済成長で深刻な大気汚染と公害問題に直面したが、これらの対策と取り組みをして今の東京があることを知り、日本を高く評価するとともに自分の国の環境保全に対する意識を高めなければならないと話していた。活発な質疑応答が行われ、予定した時間よりオーバーする盛り上がりを見せた。多和田氏と東京都環境局に感謝したい。午後は、科学技術館(千代田区)を見学した。高いレベルの展示内容に感銘を受け、それぞれの展示物の教育的意義について考える良い機会となったようである。
20日(金)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターを訪問した。本物の人工衛星、日本初の大型ロケットH-IIロケットの実機と国際宇宙ステーションに実験設備や食糧などを補給する宇宙の無人輸送機「こうのとり」を見ながら、日本の最先端の技術や研究(防熱技術、軽量化アルミハニカム構造技術など)について本学の研究推進センターの浜野亘男教授から説明を受け、知見を深めた。その後、日本の宇宙飛行士の基礎訓練施設や国際宇宙ステーション「きぼう」の24時間運用管制室も見学し、管制室のスクリーンに映し出される宇宙ステーションのライブ映像に釘づけとなった。残念ながら宇宙ステーションに滞在中の油井宇宙飛行士の姿を見ることはできなかったが、通常見ることができないセンターの施設を見学する事ができ、非常に充実した1日になった。
21日(土)は、本プログラムの担当教員によるナノテクノロジーセミナーを行った。ナノ材料の種類、その応用を学び、世界のエネルギー問題や環境問題の解決におけるナノ材料の重要性への理解を深めた。その後、ナノテクノロジー「量子ドット太陽電池」の沈研究室を訪問した。次世代エネルギー資源として期待される高効率量子ドット太陽電池についての説明を受けた。午後は先端ワイヤレスコミュニケーションセンターを訪問し、山尾泰センター長から社会にとってますます重要な社会基盤となるワイヤレス通信(第5世代携帯通信、自動走行に向けた高度道路交通システム(ITS)技術、分散無線ネットワークなど)に関する最新の研究成果、そして課題と今後のそれを解決するための先進技術について質疑応答を交え、説明を受けた。夕方には、本学の国際交流センターの佐々木直子助教がアレンジした本学の学生とのミーティングがあり、お互いに活発な意見交換を行った。その後は、開催中の本学の学園祭を体験した。中国には学園祭の習慣がないようで、参加学生たちにとって初めての学園祭の体験であった。本学の学生のガイドで、公開研究室を回ったり、催しを見たり、屋台の食事を楽しんだりと、良い思い出になった。
22日(日)の午前は、大学の合気道部の部員との会合を持った。まず本プログラムの担当教員による大学の課外活動の紹介があった後で、両国の学生たちは懇談の機会を持ったが、クラブ活動やサークル活動に関するさまざまな事情や話題など上がり、双方の学生とも興味津々で、活発な意見交換が行われた。その後、合気道部による合気道演武を観覧し、華麗なる見事な動きや技に拍手を送っていた。午後は、脳科学ライフサポート研究センターの横井研究室を訪問し、世界最先端を行く精巧な「筋電義手」などを実際に動かす体験とともに、技術の高さと研究の独創性に驚いた。研究室の学生の説明を受けられ、熱心な質問や意見交換を交えながら施設内を見学された。
夕方には、本プログラムの修了式及び情報交換会が行われ、阿部浩二副学長を始め、スタッフと学生も参加し、訪問団との交流が行われた。阿部副学長から一人一人に修了証書及びさくらサイエンスプランバッジが授与されました。参加学生からは流暢な英語によるスピーチがあり、日本の科学技術の高さの驚き、と称賛するとともに、日本や本学への感謝の意が述べられ、盛会のうちに終了した。
最終日の23日(月)には、プログラムの担当教員が成田空港まで同行し、7日間のプログラムの無事の終了を見届けた。
この1週間は連日良い天気に恵まれ、参加者全員が楽しく有意義な時間を過ごせたようである。帰国後に提出されたアンケートでは、日本の清潔さと人々のマナーの良さを感じるとともに、
- 日本の科学発展に対する理解が深まった。
- 日本の大学の教育システムを学び、日本の奥深い文化を知った。
- 日本の先進的な教育理念と科学精神を体験した。
- 日本の教員と学生は、とても親しみやすい。日本の人々の真心を感じ、勉強になった。
- 電気通信大学へ進学したい。もう1回日本へ来たい。
などの感想が寄せられていた。なお、今回のプログラム期間中では学生間の交流も深まり、2016年の春休みには逆に5名の本学の学生がハルビン工程大学へ短期留学することとなった。
作成日:2015年12月 1日 / 更新日:2016年6月 1日