電通大の国際交流
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八木 秀樹先端領域教育研究センター 特任助教

派遣先:アメリカ合衆国 プリンストン大学
派遣期間:平成22年7月22日~平成23年1月16日

研究テーマ:マルチユーザ通信のための符号化に関する研究活動

活動の概要

マルチユーザ通信のための通信路符号化と情報セキュリティの研究を進めた.通信路符号化のテーマでは,マルチユーザ通信システムにおいて,少ない計算コストで情報レート(通信効率)の限界に迫る通信路符号の構成法を提案した.特に,無線通信システムの数理モデルとして注目されている「干渉通信路」において,シングルユーザ通信システムにおける通信路符号を組み合わせることにより,シングルユーザ符号と同等の計算コストで高性能な符号が作れることを示した.従来,シングルユーザ通信では,符号長に対して多項式時間で符号化・復号化が実行でき,情報レートの限界を達成する符号が構成できることが示されている.したがって,この研究の成果より,干渉通信路においても符号長に対して多項式時間で符号化・復号化が実現できることが示される.また,情報論的セキュリティのテーマでは,盗聴者が存在する盗聴通信路において,ユーザ間協調を用いることで,秘匿メッセージの安全性を保ったまま,情報レートを向上させることができることを示した.これらの研究成果は,IEEE IT-Soc. が毎年主催する Int. Symposium on Information Theory に投稿し,採択の通知を頂いている.

研究成果概要

今回の派遣では2008年から行っている Prof. Poor との共同研究のテーマを継続したほか,情報セキュリティための符号化に関するテーマを新たに開始し,グループのポスドク研究員 Dr. Ninoslav Marina と研究を進めた.グループには10名以上のポスドク研究員が所属しているが,研究テーマの近い研究員と日常的に議論する機会を得た.Prof. Poor のグループは,情報理論分野で中心的な学会 IEEE Information Theory Society (IEEE IT-Soc.) の中でも,最も精力的に研究成果を発表しているグループのひとつである.IEEE IT-Soc. が主催する Int. Symposium on Information Theory は本分野で最も権威がある国際会議とされているが,Prof. Poorのグループからは毎年10件以上の論文が投稿されている.今回の派遣により,上記のように精力的に研究を進めているグループとのつながりを強化することができ,今後も引き続き連携して研究を進めることを互いに確認している.派遣中,トップの研究グループの日頃の研究の進め方,研究に対する姿勢を学ぶことができた.この経験は本学において研究を進めるにあたり,大きな参考になると期待している.

国際化に関する所感及び提言

近年,日本の若手研究者や大学院生が海外へ留学・訪問する機会が減っていると聞いている.世界に通用する研究レベルを維持するには,トップの研究機関との交流,ネットワークの構築が重要であろう.今後,大学の教員には,外国の研究者とコミュニケーションが円滑にとれる英語力を身につけ,国際的なネットワークを自身で構築することが一層求められると思う.今回の派遣プログラムのように,大学が若手研究者に対して海外のトップ機関に長期訪問する機会を与えることは,大学全体の研究レベルを維持するために大きなプラスになると思う.今後も同様のプログラムが実施されることを願っている.

作成日:2011年1月16日 / 更新日:2011年11月18日