宮澤 正一郎知能機械工学専攻 博士前期課程
研究テーマ:ロボットフィンガのシミュレーションに関する研究
活動の概要
本研究は、巧みな動作を行うことのできるロボットハンドの開発を目指している。その第一段階として、フィンガの位置、姿勢および接触力を対象物に合わせて調節するとともに、フィンガ自体が物体の形状を推定し、高精度で巧みな動作が可能なロボットフィンガの開発を進めている(図1参照)。本研究では、3関節2自由度のフィンガ(図2参照)を設計製作し、各関節および駆動用モータに計数機能や判断機能などの情報処理機能を持つ小型のロータリエンコーダ(IREとよぶ)を内蔵し、これらを利用した制御システムを構築する。IREには、角位置、角速度、角加速度の算出機能および接触衝突検出機能、力検出機能、制御機能を実装する(図3参照)。現在、巧みな動作の一例としてロボットフィンガの指先で物体をなぞり、形状を推定・測定することを目指している。今回の派遣先である制御工学科のTaworn教授の研究室では、製作したフィンガの質量、長さ、重心位置といった実機パラメータを用いたモデルを構築した。次にロボットの動作に最適な制御則及び制御パラメータを検討・同定するため、このモデルと設計した制御系をMatlab/simlinkを用いてプログラミングした。最後にシミュレーション実験により構築したモデルの検証・評価と設計した制御系を用いた場合の基礎的な動特性(インパルス、ステップ、周波数応答)の評価を行った。
研究成果概要
1.基礎的な動特性(インパルス、ステップ、周波数応答)に関するシミュレーション実験
フィンガの基礎的な動特性(インパルス、ステップ、周波数応答)を調べるためにシミュレーション実験をした。フィンガの関節角度の目標値を0度としてフィードバック制御をかけている状態で、外力をフィンガの指先に加えて動特性(インパルス、ステップ、周波数応答)の評価を行うシミュレーション実験をした。PIP、MP関節にはPID制御を用いている。
1.1インパルス応答
インパルス応答を調べるために、実験条件として1Nの力でパルス幅1sで指先に重力方向に入力した。その結果インパルス入力後フィンガが目標角度に戻っているが、時間が1秒と長く、応答が遅いので比例ゲイン、微分ゲインを大きくした上で、I制御のパラメータの再検討の必要がある。DIP関節が高い周波数でかつ大きく振動しているので、振動抑制のために、よりばね定数の大きいワイヤを用いる必要があることがわかった。
1.2ステップ応答
ステップ応答を調べるため実験条件として2秒後に1Nの大きさで指先に重力方向に入力した。ステップ応答が遅いので速くするため比例ゲインと微分ゲインを大きくした上で、I制御のパラメータの再検討の必要がある。
1.3周波数応答
周波数応答を調べるため実験条件として周波数応答では1Nの大きさで10Hzの周波数で指先に重力方向に入力した。DIP関節とPIP関節は10Hzで振動していたが、MP関節は振動していなかった。実際にはワイヤが入っていて振動の影響を受けるので、それを考慮したモデルを構築する必要がある。
国際化に関する所感及び提言
今回の派遣を通じて以下3つのことを得ることができた。
1. タイ王国ではキングモンクット工科大学のTaworn研究室に所属して研究を行い、教授に進捗状況を報告し、アドバイスを頂いた。Prof.Tawornとの会話だけでなくタイの大学の学生との交流の機会もあり、会話は英語であったので英語のスキルが向上したと考えられる。
2. タイの学生といっしょに出かけるなどの交流の機会があり、それによってタイの知人友人を得たことやタイでの生活を通してタイ王国の文化とタイの人々の考え方を多少なりとも理解できた。
3. タイに滞在することで経済の成長と活気を肌で感じることができ国際感覚を養う助けになった。タイ市内を移動中、日本の自動車をたくさん見ることでタイでのシェアの高さよりアジアは重要な市場であることを感じる一方、テレビやディスプレイは韓国製がデパートに並び、電車はドイツ製で大変技術レベルが高く、日本にいるときにはなかなか感じることができない日本メーカーにとってのライバルの存在を実感することができ、日本メーカーが生き残っていくためには学生時代から切磋琢磨することと海外留学経験が必要だと感じた。
まとめ
本派遣は異文化の中で格闘する力を養い、国際社会で活躍する意義を理解する助けになった。
作成日:2010年9月27日 / 更新日:2011年11月18日