電通大の国際交流
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松浦 基晴先端領域教育研究センター 特任助教

派遣先:オランダ アイントホーフェン工科大学
派遣期間:平成22年12月29日~平成23年2月28日

研究テーマ:量子ドット半導体光増幅器を用いた光信号処理技術の研究

活動の概要

フォトニックネットワークの大容量・高速化の需要に伴い、光ノードでの超高速光信号処理技術の実現が急務となっている。とりわけ、半導体素子を用いた光信号処理技術は、システムの小型化、信号処理の省電力化に有効で、世界各国で活発な研究開発が進められている。これに対し、近年、注目を集めているのが、半導体内にnm(ナノメータ)サイズの半導体粒子構造を組み込んだ量子ドット半導体光増幅器(以下、QD-SOA)である。QD-SOAは、従来の半導体素子と比較して、光強度変化に対する反応速度や、増幅器としての利得帯域を格段に向上することが知られており、次世代の光信号処理デバイスとして、大きな注目を集めている。一方、その詳細なメカニズムは未だ解明されていない点も多く、製造行程も複雑であるという問題がある。

本研究は、QD-SOAとその特徴を活かした光信号処理技術の高度化を実施する研究プロジェクトである。派遣先である研究機関は、QD-SOAの自主製作が可能で、かつ、超高速光信号処理の評価実験系を所有する世界的にも希有な研究機関である。派遣者は、これまでに、光信号処理の研究分野における数多くの研究実績がある。これらの知見や技術を派遣先研究機関でも活かし、電子回路処理速度限界を大きく凌駕する300 Gbit/s超の光信号処理技術の実現や、派遣者の独自技術を活かした新しい光信号処理技術の開拓を実施する。これにより、QD-SOAを用いた光信号処理技術の統合的な高度化を行い、QD-SOAの実用性を世界に発信することを目的とした研究開発プロジェクトである。

研究成果概要

QD-SOAを用いた光信号処理技術の実用性を明確化するため、派遣機関が所持する超高速光伝送実験装置を利用した実証実験を行った。派遣期間は、ここ十年来、サウサンプトン大学(UK)やカリフォルニア大学(USA)と並び、光ファイバ通信分野における世界トップレベル最先端研究の先導的な研究教育機関として広く認知されており、充実した研究設備も兼ね備えている。光信号処理機能としては、光波長変換や光時分割多重分離などによる評価を実施した。実験の実施についても、派遣者が主導的な立場で実験を進めつつ、派遣先での経験豊富な研究者らとの活発なディスカッションを行い、派遣期間内に主要5件の研究成果を達成することが出来た。これらの成果は、世界的に見ても、光信号処理の分野においても先駆的な研究成果であり、世界トップレベルの国際論文誌や国際会議などに本学と派遣先との共同研究成果として、広く発信していく予定である。また、機関内に実施出来なかった研究テーマや解明しなければならない諸問題なども多く残っており、今後も派遣研究機関と本学との連携をさらに密にすることで、今後も世界的に認知度の高い研究機関と本学の共同研究が今後も期待出来る状況にある。

国際化に関する所感及び提言

派遣所属機関は、毎年、画期的な多く研究成果を排出しているが、その背景として、多くの優秀な留学生や短期滞在研究員、さらに海外研究機関との積極的な共同研究の実施などが挙げられる。本学を含む日本の研究機関と比較しても、海外機関とのネットワークの充実ぶりは突出しており、これらの成果として、多くの研究成果が輩出されていることを痛感した。本学も今後、さらなる国際的な共同研究の推進が重要であると感じた。

作成日:2011年2月28日 / 更新日:2011年11月18日