横山 貴紀情報システム基盤学専攻 助教
研究テーマ:監視用途を目的としたネットワークカメラの映像解析技術に関する研究
活動の概要
シドニー工科大学のXiangjian He准教授が率いるコンピュータビジョン・認識研究室において,監視用途の映像解析技術に関する共同研究を目的として3ヶ月弱ほど訪問研究員として滞在し,研究活動に取り組んだ.
同研究グループのサーベイランス研究室に机と計算機を提供していただいた.訪問研究員には他の大学教員と同様に,シドニー工科大学のメールアカウントやネットワークサービスへのフルアクセス,スタッフルームへの立ち入りに必要な認証コードや図書館利用証など,研究活動を行う上で必要なサービスを滞在初期から提供していただき,円滑に活動へ着手することができた.
コンピュータビジョン・認識研究室では,画像処理の基礎研究から文字認識や物体認識,画像処理を応用したネットワーク解析技術まで幅広く扱っている.研究室は准教授1名,講師2名,非常勤研究員1名とポスドク研究員1名,学生は博士課程が5名と修士課程1名から構成されていた.定例ゼミが毎週開催され,学生と教員がそれぞれ取り組んでいる研究に関連する論文紹介や進捗状況を持ち回りで報告し,議論を行っていた.滞在中は全てのゼミに参加し,自分が発表する機会も設けて頂き,電気通信大学と所属研究科・講座の紹介や自分の経歴,取り組んでいる研究内容について紹介した.博士課程の中間審査会が開かれていた時期でもあり,それらを聴講する機会にも恵まれた.
教員や学生と共に,研究分野の技術動向や今後の研究計画などについて意見や情報の交換,関連文献の調査や収集を中心に研究活動を行った.また,准教授から依頼された国際会議の査読を担当した.これらの活動と並行して,継続していた動画像処理のアルゴリズムの改良と開発にも取り組み,基礎的な実験を滞在中に進めた.
研究活動以外では,教員や学生と交流する食事会や,学生と共に近隣のシドニー大学や市街を散策する機会を得られた.シドニー工科大学はセントラル駅から徒歩で数分の所にあり,ほぼ街の中心部に位置し,市内のさまざまな場所へのアクセスも良かった.
短い滞在期間であったが,受け入れ教員や研究室の学生,大学スタッフのおかげで充実した活動を行うことができた.
研究成果概要
派遣による成果
滞在中は主にディスカッションを中心に研究交流を進め,教授,准教授,講師の方々と個別に話し合う機会を設けていただいた.研究に対する直接の助言だけでなく,各教員のバックグラウンドやこれまでの研究活動,大学に対する考え方や,学生指導に関することなど,さまざまな話を聞く機会を持てたことは,派遣によって得られた貴重な経験であり,成果であったと考えている.
人物や車両などの物体認識に取り組む博士課程の学生とその指導教員と共同で行った文献調査や意見交換を通じて,今後研究を進めていく上で重要となる知見を共有することができた.残念ながら具体的な共同研究の成果を滞在中に得ることは出来なかったが,今後研究を進めていく上での重要となるアイディアを多数得ることができた.また,同研究グループで映像監視技術を専門とするMassimo Piccardi教授とも意見交換を行う機会を得た.動作解析に関する最近の技術動向や,現在進めている具体的な研究内容について教授していただき,関連するアルゴリズムを紹介していただいた.
ロバスト性の向上と処理の高速化を目的とする動画像処理のアルゴリズムを滞在中に実現し,基礎実験によって効果を確認した.この内容は,帰国後に国内会議の報告書と国際会議の予稿としてまとめ,それぞれ発表を行った.
本学への貢献等
国際交流提携校である両者の交流促進につながることを期待し,ゼミや個別に話す機会に電気通信大学の紹介を行った.短期間の滞在制度があれば前向きに検討したいとする教授と准教授の言葉を頂いており,何らかの制度を通じて将来的に招聘が実現することで,本学へ貢献したいと考えている.
国際化に関する所感及び提言
外国語のスキル
研究や生活を行う上で最低限のコミュニケーションを取ることは可能であったが,活動期間が3ヶ月弱と短期間であったため,滞在による語学能力の向上を強く実感するまでには至らなかった.
海外機関とのネットワーク構築: 過去に講座に所属する学生が交換留学として派遣された研究グループであり,従来から連絡を取り合っていた教員の方々に加え,新たに知り合う機会を得ることができ,その方々との新たなネットワークの構築が実現したと考えている.
国際的視野の涵養
大学に在籍する学生の出身国や人種が多様であるため,教育や研究を円滑に進めるためには,英語による高いコミュニケーション能力と国際的な感覚が重要であることを,今回の派遣を通じて再認識した.
提言
今回の派遣によって様々な貴重な経験を得ることができた.このような機会を一人でも多くの方が受けられるよう,海外機関への定期的な教員派遣やサバティカル制度が充実し,国際交流を促進する環境が今以上に整うことを期待している.
作成日:2010年6月25日 / 更新日:2011年11月18日