電通大の国際交流
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大橋 隼人レーザー新世代研究センター UECポスドク研究員

派遣先:イギリス クィーンズ大学ベルファスト , アイルランド ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン
派遣期間:平成23年7月25日~平成23年 9月28日

研究テーマ:静電型エネルギー分析器を用いたレーザー生成プラズマのイオン分光研究

活動の概要

2011年7月27日~8月2日にイギリスのクィーンズ大学ベルファストで開催された第27回原子衝突物理学国際会議 (XXVII International Conference on Photonic, Electronic and Atomic Collisions, ICPEAC 2011) に参加し,ポスター発表を行った。ICPEAC は原子衝突物理に携わる研究者が隔年毎に集い,研究成果を発表すると共に,意見交換や国際的な研究交流の促進を図ることを目的としている大変権威のある国際会議である。その後,アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを訪問し,レーザー生成プラズマの権威である G. O’Sullivan 博士グループの E. Sokell 博士の元で,静電型エネルギー分析器を用いたレーザー生成プラズマのイオン分光研究を行った。

レーザー生成プラズマは次世代半導体リソグラフィ技術の光源として注目されており,その最適化の為の研究が世界中で精力的に行われている。光学系ミラーの極端紫外領域における反射率が最大になる波長に対し,その出力パワーとプラズマ生成の為の入力パワーとの変換効率を高めることが最大の課題であるが,実用的なリソグラフィ装置開発の為にその他にも様々な研究が行われている。本研究では,レーザープラズマ生成時に周辺に飛散するイオンの価数とエネルギー,その角度分布の測定することで,レーザー生成プラズマが周囲に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。

また,私の日本での研究内容についてインフォーマルセミナーという形で発表を行った。

研究成果概要

訪問先研究室では過去にナノ秒レーザーを使用して静電型エネルギー分析器 (ESA) を用いたレーザー生成 Sn プラズマのイオン分光を行った実績があり,本研究では実験槽から取り外されて長い期間放置されていた ESA の再構築した後,ピコ秒レーザーを用いたレーザー生成 Sn プラズマのイオン分光を行った。

幾つものトラブルが生じて ESA を正常に動作させるまでに多くの時間を費やしてしまったが,標的ディスクへ垂直に入射されるピコ秒レーザーに対し45°方向に放出されるイオンについての価数分布及びエネルギーの測定を行った。定量的な評価は今後の課題であるが,定性的にはナノ秒レーザーを用いた場合と類似した価数・エネルギー分布が得られた。また,ナノ秒レーザーでは表面洗浄兼 ESA 信号を得る為に 2 度のレーザー照射が必要であったが,ピコ秒レーザー 2 回目の照射では ESA 信号は殆ど得ることができず,1 回目の照射でのみ十分な信号強度を得られるということが判明した。今後は他角度での測定を多数行い,レーザー生成プラズマから飛散するイオンのエネルギー及び角度分布マップを作成する予定である。

インフォーマルセミナーでは訪問先研究室とは違った手法で多価イオンを研究する私の発表内容に興味を持って頂くことができ,今後本学との共同研究を視野に入れた新たな国際協力関係を築くことができた。

国際化に関する所感及び提言

日本国内では英会で会話をする機会が少ない為,国際会議での研究成果発表や海外で共同研究を行うことは,英語によるコミュニケーション能力向上や英語を話すことに対する躊躇いを取り去る良い機会となった。日本語を話せる人が居ない訪問先を選択することで,半強制的に英語圏での生活に馴染めるようになる。コロコロ話題の変わる日常会話よりも実験室における物理に関する会話の方がお互いの意思疎通が取れ易く,言葉が通じ難くても研究分野の共通知識があれば,国際共同研究に言葉の壁は殆ど無いように感じた。

今回の派遣では訪問先の研究員や学生と何度も議論をする機会を持つことができ,お互いの研究内容について有益な情報が得られた。また,今後の新たな国際協力関係の礎を築くこともできた。国内共同研究も勿論有益だが,個人的には国際共同研究の方が得るものが大きいと感じる。

若手研究者には本プログラムのような制度を積極的に利用して海外における経験を積むことを強く勧めます。

作成日:2012年4月 5日 / 更新日:2012年4月 5日