国際教育センターホーム IE-IEレター* 【日本語力】~留学生活を支える力~ 内藤真理子先生

IE-IEレター* 【日本語力】~留学生活を支える力~ 内藤真理子先生

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留学生達の学生生活を支える力「日本語力」を育ててくださる日本語教師として、国際教育センターに着任された内藤先生をインタビュー。

電通大は日本語教育を自前で上級(N1)まで行える大学として定評があります。2019年10月に内藤真理子先生が日本語教育担当に加わりました。先生は神田外語大学、立命館大学、関西学院大学等々の国内の大学の他、韓国、マレーシア、シリアなどの外国でも日本語の指導を行ってきた国際派。早速お話を伺いました。

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Q:プロフィールを教えてください。

 学部で「地理学」を専攻したので外歩きが好きです。韓国で日本語を教えていた頃に、登山好きが多いことから山登りを始めました。マレーシアでは海が綺麗なのでスキューバを覚えて、シパダン島の海に潜ったり、シリアに居たときはエジプトのシャルム・エル・シェイクの海でダイブしたりなど、アウトドア系。文化面では、読書、映画、和食器集め、美術館・博物館や植物園巡りなど。

Q:具体的にはどんな所へ巡りに行きますか?

 三鷹天文台のプラネタリウム(4D2U)。最近は落語が好きになり、末広亭や鈴本演芸場にも足を運びます。一之輔と喬太郎が好きです。

Q:美術はどういったのがお好きですか?

 江戸時代の長谷川等伯やゴッホや印象派の画家です。

Q:モットーは何ですか?

 「将来のために汲々とせず、今を大切に生きる」こと。大胆そうに響きますが、実は気が“小さく”、その一方で気が“強い”と言われてます。(笑)

Q:好きな食べ物は?

 シリアやレバノンの料理(ケバブやシュワルマ)はアラブで一番美味しいと言われてますし、実際そうだと思います。でも、和食が好きで、一時帰国すると醤油、味りん、料理酒を買い、うどんを打ち、そばを茹で、羊肉の餃子(?)やキャベツとかぶの鍋などを作って食べていました。

Q:シリアで日本語を教えていた頃の雰囲気はいかがでしたか?

 混乱が始まる前の平和な時期でした。平和と言っても、通常は生き残れるかについて心配することはないという程度で、実際には、年に数回、通勤路などの身近なところでテロが発生していました。学生から、父親が政治的な理由で拘束されていると聞いたこともあります。誰が監視しているかわからないので、私も政治的なことを話したり聞いたりするのは控えていました。怖いこともよくあったようです。電話も盗聴されることが…。また、ある時花瓶に盗聴器のようなものが入っていたので、大騒ぎ!!でも、結局オルゴールでした。(笑)そんな緊張感のある生活でした。それに、外国人女性でしかも異教徒なので好奇の目で見られることが多く、精神的に疲れて、休みにはアラブ圏を離れて、オランダやマレーシアへ行ってました。それでも異文化に触れられたのは面白く、行ってよかったと思います。

Q:例えばどういった事でしょう?

 宗教について考えさせられました。新入生に教えている頃、ある学生に「遅刻したら『すみません』といって頭を下げるように」と指導しましたら、その学生はモスクで指導者に「神以外に頭を下げてもいいのか?」と問うたようです。「それは日本の文化なので問題ない」と諭されて戻ってきました。頭を下げるだけでもこんなに違うのだとおどろきました。

Q:なぜ日本語教育の道へ?

 地理専攻だったので、地図作成を手掛ける測量会社を目指し、バブル崩壊後の就職難に喘ぎながらも、見事内定ゲット。でも、大学生最後の夏休みに、東南アジア一帯を旅して帰国しましたら、何故か内定取り消し。小柄なせいで、測量用の重機材運びは無理と思われたようです。 身体は結構頑丈なのに。9月だったので就活終了の時期!!兎に角、測量だけが仕事じゃないと奮起して、高校時代から関心のあった日本語教育へキャリアチェンジ。日本語教師養成学校に入学し、終了後、韓国の語学学校に就職。それが現在のキャリアのスタートです。

Q:日本語教育に必要な能力は何ですか?

 外国人の日本語の間違いから、何を、どう間違えているかを適切に判断して、相手のレベルに応じた語彙と文法を用いて対応できる能力でしょうか。

Q:ご自分の能力に自信を持ったのはどんな時ですか?

 自分自身だけではまったく成長を感じることができなかったのですが、新人教員の日本語が学生に通じないと見て取れた時です。例えば、日本では、親しくない人には敬語を使ったり、婉曲な表現をしたりしますが、外国人には分かり難くなります。目の前にいる日本語学習者の日本語の能力を即座に判定し、その結果に合わせて日本語のレベル調整をして話すというのは日本語教師だからできることです。部外者からは子供のように話していると思われそうですが。

Q:日本語教育のニーズって何でしょうか?

 これからの日本はさらに外国人の力を必要としていくでしょう。日本で生活する外国人が日本語を学ぶことが求められていますが、同時に日本人が「外国人に分かる日本語」を話す技術を習得することも必要だと考えます。一般の日本人がこのような技術を習得すれば多くの外国人にとって住みやすい日本となるでしょう。

Q:作文の指導経験も豊富ということですが、学生へのアドバイスは?

 よい文章を沢山読んで欲しいです。よいinputがないとよいoutputができないからです。最近の若い人は昔のように推敲された文章をあまり読んでいないようです。SNSなどは仲間内の言葉ですから楽しいですが発展性に乏しい。新聞や小説などから豊かな表現に接して欲しい。また、作文は沢山書くことが大切。空手の本をいくら読んでも空手自体は強くならないように、作文は自分の手を動かして書かないと力が付きませんから、どんどんレポートを書いてください。それから、書きっぱなしにせず、一晩寝かせてから改めて見直すことも大切です。このことにより、自分のレポートの論理を批判的に確かめることができます。できれば友人とレポートを交換し助言し合いましょう。

Q:今後の日本語教育の展望や電通大での抱負とかは?

 日本語教育については中堅的な立場にあると思うので、これからの日本語教育に貢献したいです。例えば、研究会の幹事などは大変ですが、私も先輩方の献身によって学ぶ機会を得てきたので、少しでも恩返しがしたく、引き受けるようにしています。また、ディベートなどの力を入れてきた教育実践を公開して、活用してもらい、一層の発展の礎になれたら嬉しいです。

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 電通大では、学部留学生や交換留学生の日本語のニーズを調べ、要求に応えたいです。個別の授業を越えて、入学から卒業、そしてその先までも見通したカリキュラムを考えていきたいです。合わせて、分かり易い日本語を日本人学生に指導することにも取り組めたらと考えています。そして、日本人学生が外国人に臆することなく話しかけられるようになって欲しい。電通大の中でも、豊かな異文化経験が可能です。同じ人間同士なのですから、壁を作らないで、心が柔らかいうちに、ぜひ世界と繋がって欲しいと思います。
 ※この記事は2019年11月18日に行われたインタビューに基づいています。

詳しい日本語教育プログラムについては下記をご覧ください。

http://www.fedu.uec.ac.jp/current/guide/training-in-japanese-language-and-culture/

http://www.fedu.uec.ac.jp/en/current/guide/training-in-japanese-language-and-culture/


 

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作成日:2020年1月30日 / 更新日:2020年3月23日